クロマツ5本残った!
        「素晴らしい景観切らないで」住民の訴え実る
               白浜町「浜通り」の拡幅工事
 白浜町の温泉街一のメーンストリート「浜通り」(県道)の今年度の拡幅工事がこのほど完了したが、名勝地、白良浜海岸に面したクロマツ5本が「海岸の松林は素晴らしい景観なので切らないで」という地元住民の願いが実って残った。当初、拡幅工事に伴い八本のクロマツが、切り倒される計画だったが、住民の要望で三本だけ伐採、五本保存された。歩道はクロマツが根を張り、「海を見ながら歩けるように」と県道より高い所にに造り、スロープ式の道路に生まれ変わった。
 浜通りは幅が五〜六メートルと狭く、大型バスの対向が困難で、海水浴シーズンには一方通行に交通規制するなど、交通混雑のネックになっていた。このため県の田辺土木事務所が長さ九十メートルにわたって幅十三メートル(うち両側に三メートル)に拡幅を計画。道路より約一.五メートル高い民有地で白良浜に面した松林を買収し、五十〜百年生のクロマツ八本(直径五十〜六十センチ、高さ約二十メートル)を切り倒すことにした。
 ところが、地元の浜通り町内会(鈴木博之会長)や自然保護団体から「風光明美な松林を残して」との声があり、三本は伐採したものの、残り五本は切らないことに設計変更し、十月から着工していた。
 観光客に喜んでもらえる
 浜側の歩道は車イスても通行ができるようになっており、地元では「自然が残ったうえ、歩きながら白良浜や海が眺められるので観光客にも喜んでもらえそう」と話している。

                                             紀伊民報 平成元年12月24日