昭和26年 1月1日、明光バスへの憤慨竜神バス進出 かねて明光バスと旅館組合の対立があったが、明光バスがバス貸切料金を駅〜白浜間1,800円に値上げした事から、旅館組合では竜神バスを1,200円で貸切り運転で本日白浜口駅前に進出。テンヤワンヤの騒ぎになる。 1月4日、緊急町議会を召集 明光バス対旅館組合の対立は、竜神バスの乗入れで極度に尖鋭化し、明光バス小竹社長や安田運輸課長が旅館の客引らに袋叩きに遭うなどのこともあって、これらの最悪の事態を収めるため、町長は緊急町議会を召集。次の調停案を決め、町長、議長、田中議員が双方に対し調停を進めることになった。 1、明光バス発表の運賃は、貸切バスのみ従前通りの料金に据え置く。 1、遊覧バス料金は、今回の値上げのため、新車2台を購入、平草原に休憩所を設け、牛乳、絵ハガキ等を遊覧客にサービスするものであるから、改定料金は認める。 1、明光バスに対しては、今後一層白浜発展のために運輸の円滑、サービスの向上に努力させる。 1月5日、明光バス町の調停案受諾 先に町側から示された調停案を、明光バスは今回の事件を惹起したことは甚だ申訳ないことで、円満解決を望むから調停案に従うと受諾。旅館組合はこれに応じられないと回答。 1月6日、駅前の壮観バスのオンパレード 町当局の調停案もまだ受諾しないまま、本年初めての黒潮列車が午後5時6分駅到着を巡って、駅前には明光バスのトレラー大潟観光バスがずらり並び、これに対抗して旅館組合が借切った竜神バスは構内の駐車権がないため、半町もはなれた場所に居並ぶなど、両者側の客の争奪戦を演じたもので、バスの展覧会と云った格好である。 1月10日、省営か竜神バス乗入れか 明光バス対旅館組合の紛争は愈々激化して、省営バスか竜神バスの定期便乗入れの裏面工作運動が表面化するなど、白浜温泉の波荒い。 1月15日、竜神バス乗入れ中止 14日、大阪陸運局長代理原山総務部長ら係官来町、明光バス対旅館組合紛争について関係方面の意見を聴取。町長と会見。15日帰阪。 旅館組合で対策委員会を開き、 1、15日で竜神バスを組合で借切る事を中止する。 1、16日以降必要あって旅館主が個人的に竜神バスを借切ることは差支えない。 1、組合は明光バスの貸切りバスを使用しない旨決議していたが、近く総会を開き、今後のことを協議決定する。 以上のことを決め、取り敢えず本日限り竜神バスは組合借切りで白浜口駅には来ないことになった。 1月20日、明光バス問題解決旅館組合回答で 先に町より申入れの調停案に対し、旅館組合の組合員の中から、幹部のこれまでの対応の態度に専横の姿勢があったと非難の声あり、18日夜、組合総会を開き、調停案受諾と決定。この決定で20日峰尾組合長は受諾の回答文を町に提出した。 回答内容は、「紛糾を惹起し御迷惑をかけたことは申訳ないので、謹んでお詫びする。町当局が調停を労されたことに深甚の謝意を表する。竜神バス貸切り利用等は、各自の自由意志としたから、当局の御憂慮は一応解消せられていることと思慮する。今後は明光バスと共に白浜町の発展のため努力したいと存ずる。」等であり、これで深刻だった紛糾もようやく円満解決する。 3月30日、バス問題再燃竜神バス越境で 明光バスと旅館組合のもつれは、町当局の調停案を双方が受諾して一応解決していたが、近頃竜神バスが白浜に貸切車の営業所を新設するなど、明光バスとの間で交わされている覚書を無視していることに明光バスが反撥。平草原専用自動車道には竜神バスは乗入れさせないと態度を硬化、バス問題再び波乱含みとなる。 以上が「白浜の戦後日記」 昭和58年3月発行、白浜町誌編纂委員会 |
26年1月1日以来田辺市なる竜神自動車会社(社長小川豊平氏)は、突如数台のバスを白浜町に乗り入れ、乗合類似の行為を為し、白浜旅館組合これに介在して微妙尖鋭なる事態を現出し、県陸運事務所長、県乗合自動車組合等の斡旋も効無く、当会社は已むなく27年4月訴訟を提起し、同年8月5日損害賠償金50万円をもって示談解決した。 以上が「明光バス30年史」 昭和33年8月印刷 湯川宗城著 |
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