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  白良浜報告  浸食状況まずまず                参照 昭和56年12月24日 紀伊民報

         複雑地形 十bの砂層確認

 夏の海水浴場のメッカである白浜温泉(白浜町)の名勝白良浜は全国的にも数少ないという石英質の白砂海岸。その貴重な白砂が年々減っているため県の委嘱を受け、総合的な養浜計画を検討している白良浜海岸保全対策連絡協議会(会長・岩垣雄一京都大学教授)は二十二日、「白良浜は複雑な地形で、台風や季節風の影響で砂地の変動が見られるが、心配されていたほど侵食状況は極端に進んでいない」といった、これまでの研究調査経過を発表した。

 同協議会は、白砂の流出防止対策とあわせて魅力的な海水浴場づくりなどに主眼を置いた養浜計画を作成する目的で今年四月発足。メンバーは会長の岩垣京大教授や和歌山大学の原田節朗ら学識経験者をはじめ建設省近畿地方建設局、県、地元白浜町関係者ら十一人の委員で構成、すでに県と白浜町が昨年から行っている事前調査をもとに今年六月から本格的な調査をスタートさせた。この二年間の調査費は約三千万円。

 これまでの調査は、同浜のある鉛山湾内海域二十カ所で海水浴シーズン真っ最中の八月に水質検査をしたのをはじめ、養浜材として利用可能な砂量と侵食状況を反射音波で調べる音波探査、海底砂地の深浅測量、台風や季節風などで砂地の変動状況を上空から観測する航空写真撮影ーなどほぼ一通り終えた。

 これらの経過報告で、例えば湾上空で発生する八月〜九月の台風と冬場の季節風は風向きが違い、こういった風の吹き荒れる時期には波浪も伴って同浜の砂地形が大なり、小なり変動したり、風向きによって微妙に影響を受けることがおおむねわかったが、現在のところ侵食状況は極端に進んでいないとみている。また、湾内の砂地は最も深い部分で約十bの砂層があることも確認された。

 このほか、同浜は太平洋に面した湾口に位置し、海底の地形が複雑であるなど、国内外で養浜計画が進められている他の海岸にみられない特殊な地形に囲まれているため、先進地の計画事例は参考データーにならないことも報告している。

 同協議会では、これまでの調査のほか海浜流調査をはじめ、今回確認された海底砂層と同浜の白砂の流形・砂質など細部にわたって観測、同質の砂であるかを究明したうえで、具体的な砂流出防止策や同質の砂探しなどに取りかかる計画。そのため、これまでの一連の調査結果による基本構想を、来年三月末までにまとめたいとしている。これを受けて県は、できれば来年度から一部工事に着手する意向だ。