白い白良浜ピンチ

  裏目 養浜で藻侵入

  緑変心配

 西牟婁郡白浜町白良浜の砂浜がやせていくのを防ぐため、養浜事業として県が同海岸沖に造成した石の人工島で囲まれた海がよどみ、海底に藻が生えてきた。せっかくの養浜事業が裏目に出た格好になり、県と同町は急きょ、浜と人工島で囲まれて「内海」状になった部分と人工島外側の海水の入れ替え作業を始めた。

 海水入れ替え

 人工島は同海岸約百三十bに造られ、五月末に海岸と石の突堤で結ばれた結果、人工島と突堤、海岸で「コ」の字形に囲んだ約七千平方bの入り江が出来た。六月ごろから入り江側の人工島の基部に藻がつき始め、七月ごろからこれが海底部に大繁殖し、その範囲も拡大、ちぎれたのが海岸に打ち揚げられるようになった。白くてご自慢の同海岸の一部が、緑色に見えだしたため、町は底引き網で藻を引き取るなどした。
 入り江の水が外洋に還流せずによどんだ結果、富栄養化したため藻の発生になったという意見もあり、ポンプを使って海水を入り江から外洋へ毎分二d、外洋から入り江に毎分三dを入れ替える作業を始めた。八月末まで続ける方針。
 この入り江のよどみについては、養浜計画の初期から指摘する人もいたが、県や町は入り江はやがて砂浜になるし、それまでは自然潮流で水は入れ替わる、として工事を進めてきた。町民の中には「砂浜になるまでには当分時間がかかる。藻の繁殖を防ぐためには海水の入れ替えだけでなく、根本的な対策を早めに打っておかないと、白良浜が緑の浜に変わってしまわないか」と心配する人もいる。

参照 昭和63年8月20日 朝日新聞


Jpeg






















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 白良浜海水浴場

 七月下旬に白良浜海水浴場で大量発生したアオノリの一種は、白浜町のその後の調べでヒゲアオノリと分かった。生物学的な駆除は不可能だが、最も繁殖した海水浴場南側の人工島(離岸堤)付近は、来年には砂浜になるため「海水がよどまなくなり、海藻の繁殖した最大の要因は海の汚染で「抜本的な対策が必要」とするほか、町が頼みとする養浜事業にも「異質なものを投入されては自然破壊につながる」と慎重な検討を望む声があり、同町の今後の対応が注目される。

 海草は七月二十二日朝、海水浴場の清掃に来ていた人が、浜辺に大量に打ち上げられているのを見付けたのが初めてで、その後どんどん繁殖。一時は浜辺から数b沖まで海藻で真っ黒に見える時もあった。同町では清掃員のほか職員も動員。網で掬(すく)いとったり、人工島付近の海水をポンプで入れ替えるなど応急策を講じる一方、県水産増殖試験場や三重大学藻類増殖研究所に海藻の調査を依頼していた。
 海藻の種類は三重大で分かった。同研究所の話では外洋で繁殖することが多く、白良浜のようなところで繁殖した例はない。通常、栄養分の少ないところに、何らかの影響で栄養分が供給されると繁殖し、海水の動かない場所だと繁殖力が大きい。ちぎれた状態でも繁殖する。また、藻類全体の傾向で水温が二十七、八度以上になると光合成が落ち成長が止まる。今年のような気象が繁殖と関係あるとも考えられるが、いずれにせよ「生物学的な駆除は不可能」としている。

 一方、同町や事業主体の県では人工島付近の海水がよどんだのが最大の要因とみて応急策を取ったが、片田良穂白浜町長は「あそこは養浜事業で砂浜にする計画で、今後できるだけ作業を急ぎたい」とし、事業完成を急ぐことで解決できるとしている。
 しかし、養浜事業を検討した京都大学のある関係者はあくまで砂浜を痩(や)せないよう考えたもので、海の汚染状態などは考えの中に含まれていなかった」と指摘。調査した結果、白良浜付近だけでなく白浜漁港一帯は既に海底にヘドロがたまり、海が死んだ状態になっているという。また、養浜事業が今年から始まり、工事で海底のヘドロをまきあげたのも、海藻の繁殖に拍車をかけたとも見られている。

 このため、人工島付近を砂浜にしても完全に解決できるという訳ではなく、もっと抜本的な対応が急務という。 

参照 昭和63年8月18日 日刊紀州新報

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  白良浜の海藻繁殖対策
  養浜事業を前倒し
  白浜町が県に要請 来夏までに砂投入

参照  昭和63年9月15日 日刊紀州新報